全国各地に活動的なローバースカウトはたくさんいますが、遠くの仲間の活動を知る機会は多くないかもしれません。今回、英国エディンバラ公 国際アワード(ゴールド)を受賞された神奈川連盟 山岸野明さんから話を伺うことができました。この貴重な体験談から、一緒にローバリングのヒントを探してみませんか?
Q,まず、エディンバラアワード(ゴールド)を目指すきっかけは何だったのでしょうか?
「スカウトとして一生懸命取り組んだ『証』を残したい」と思ったのがきっかけです。
この話をするといつも周囲からは驚かれるのですが、私はBVSから活動しているものの、菊章も富士章も取得していません。特に富士章の時は、レポートまで仕上げていたのに手続きに手間取り取得できなかったという悔しい思い出があります。今までスカウトとして楽しく頑張ってきたという事を証明するために、経験だけでなく形に残る物を得たい、と考えて取り組み始めたのがきっかけです。
また、自分の後輩たちにも、「ローバーになってから活動の幅が一層広がるし、大きなやりがいがある」ということを伝える絶好の機会にもなると思いました。
Q,「英国エディンバラ公 国際アワード」はもともとご存知でしたか?”知るきっかけ”はあったのでしょうか。
日本連盟のHPに掲載されていたので知りました。もともと国際活動の情報を仕入れるために日連HPは一日一回はチェックしていました。このマニアックな日課が無ければ、アワード挑戦は始まっていなかったでしょう(笑)。しかし現在は、RCJを始めローバーに関する活動を広げる動きが非常に活発になっているので、新しい活動にチャレンジしやすいと思います。
Q,実際にプロジェクトを開始するとなると、様々な過程や精神的な苦労も多いのではないでしょうか。
数多くの苦労がありましたが、1つは「前例がなく、何をすれば良いかイメージがわかなかった」ことです。本アワードの参加者の募集が開始されてから、アワードを完了したローバーがおらず、日本連盟もナレッジの蓄積が無かったため、「どの程度のレベルを行えば認定されるのか」という基準をつかみかねていました。結果的にアワードリーダーと話し合いを重ねて、無事に計画をスタートさせることができました。また、アワードリーダーもアワード指導は私が初めてだったので、二人三脚で進めていきました。ご協力いただけたことに感謝しています。
「思い」を実際に「行動」へ移すことは簡単なことではないことがよくわかります…。
それを乗り越えて実際にプロジェクトを遂行した山岸さんの取り組み、またその過程での困難や対処など貴重なお話を”詳しく”聞いてみましょう。
Q,どのような取り組みをされたのですか?
本アワードは、「一定の期間の継続した自己啓発活動」と「アドベンチャラス・ジャーニー(探検旅行)」、そしてゴールドは「レジデンシャル・プログラム(宿泊型の奉仕活動)」により構成されています。
●「自己啓発活動」
各レベルごとに設定された期間、3つのテーマに応じてプログラムを行ないました。ゴールドは、各プログラムで最低12か月、また、シルバーを取得していない場合は1つ追加で6か月(合計18か月)取り組むことが要件となっています。私は、次のようなプログラムを行いました。
奉仕活動。自団や地区のBS・VSへのスキルトレーニングを12か月行いました。 | |
体作り。「1444km」を14か月かけて歩き、健康増進と冒険旅行に備えた体力増強を図りました。 | |
技能向上。TOEIC800点を取得することを目指して18か月勉強をつづけました。 |
●「アドベンチャラス・ジャーニー」
自身を含む4名以上の仲間と、テーマの調べ学習をしながら定められた距離を自力で走破する、いわば「探検旅行」です。ゴールドは、1日の移動時間が8時間以上、かつ、総移動距離が80kmを超えることが要件となっています。
テーマは「自身の信仰を見つめ直す」ことで、東京都や神奈川県の信仰に関する施設を歩きながら、歴史研究と「信仰を集める理由」を考えました。築地本願寺や東京ジャーミィ、神田明神など大きな寺社から地元の信仰施設をめぐり、興味深い発見をし、身の回りにあるものを考察することの大切さや面白さを学びました。
なお、旅に参加してくれた仲間は神奈川ユースの活動体「Youth Scouting of Kanagawa(YSK)」の仲間に呼びかけ、協力してくれる有志を募りました。
●「レジデンシャル・プログラム」
「4泊5日、または、2泊3日×2週の期間、住み込みで奉仕活動を行う」というプロジェクトです。
私は大学院で「国際関係学」と「教育学」を学んでいたので、「外国の子供たちに教育ボランティアをしたい」と考えました。「スキル」で英語学習について取り組んだので、神奈川県内のNPO法人「ABCジャパン」で「学齢超過の外国につながりのある子ども達への日本語支援」を行いました。プログラムの対象は、「学齢超過」=その学年の年齢を過ぎており、「外国につながりのある子ども達」=両親または片親が外国人の子ども達、です。そうした子ども達への教育支援を行う団体「ABCジャパン」と連絡を取り、アワードの趣旨を説明したところ受け入れを快諾していただきました。
なお、私が教えた子ども達の多くは中国籍でした。中区にあるゲストハウスに宿泊し、ボランティア後にNPOのスタッフを招いて食事を作るという形で「共同生活」をしました。
今まで関わりの無いコミュニティにコンタクトを取り、共に生活するというのは非常に難しい要件でしたが、新たなつながりができ自身の可能性も広がったと考えています。
Q,他の活動とは異なる、”悩んだこと”や”苦労したこと”はありますか?
最も苦労したことは、継続期間が長期間に及ぶことです。私の場合、約2年半の期間プロジェクトを継続しました。その間、大学院の論文発表や就職活動など、両立が難しい時期もありました。しかし、日常生活で少し意識することでプログラムを組み込むなど、負荷を減らしつつ継続することを心がけました。
Q,取得までに様々な方の支援や他の協力もあったかと思うのですが、いかがだったでしょうか。
取得までには、多くの方に支えられてプロジェクトを完遂することができました。アワードリーダー、「YSK」の仲間たち、NPOの皆様、他にも声援を送ってくださった皆様がいなければ、最後まで走りきることは出来ませんでした。スカウト教育法に「社会とのつながり」が加わりましたが、ご協力いただく中で多くのコミュニティとの関わりが生まれ、間違いなく自身の成長に大きく寄与していると考えています。
Q,最後に、このインタビューをご覧になっている方々へのメッセージをお願いします。
今回のゴールド取得においてご協力頂きました全ての皆様、そして私の拙い活動報告に関心を持って頂きました全ての皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!
今回、英国エディンバラ公 国際アワードに取り組み、プロジェクトを遂行、達成された山岸さんからいろいろな質問に答えていただきました。いろいろなヒントがあり、参考になったのではないでしょうか。
それぞれのローバリングを楽しみ、自己研鑽に励んでいきましょう!